CHに限らず、「実は自分は養子だった」という設定は
メロドラマから2時間サスペンスに至るまで
頻出しすぎてもはや何の捻りも無く使われるのは
はばかられるほどの設定かもしれませんが、一方で
作中の描写はどれだけ今の現実に即しているかというと……
もしかしたら「未だに取り調べにカツ丼の出る刑事ドラマ」並みかと。
そんなことを、実際に本を一冊手に取ってみて感じました。

その本も、近所の図書館で養子縁組についての本は
これしかなかったから、というもの(しょうがない、分館だから)
内容も、編者の団体が行っている「養育里親を経ての養子縁組」
というケースを前提にした手続き例になっているので
それ以外の、例えば血縁者同士の養子縁組や
香のような場合とはまた違うのかもしれませんが、
そもそもまずは里親を経て、などの縁組のプロセスを
どれだけフィクションの中で意識されているのやら……

で、養子縁組制度についてですが
現在日本では「特別養子」と「普通養子」の2つの制度が存在します。
うち特別養子は1988年に出来た比較的新しい(よね?
だってCHアニメですら始まった後だもん;笑)制度で
当然ながら香は旧来の普通養子制度のもとで
槇村家に引き取られたと考えられます。
この「特別」と「普通」の違いですが、大きくいうと
前者は6歳未満の子供のみを対象としたもの
そしてこの場合、実親との関係は切れ養親の「実子」となります。
逆に普通養子の場合、実親との関係は残り続けるので
遺産相続の対象にもなれば、扶養を押しつけられることもあり得るとか。

そして、敢えて話を(掲載書の趣旨と反して)普通養子に絞りますが
未成年の子を引き取る場合、決して両親揃ってることが条件ではないんですね。
それはあくまで特別養子の場合(なのでAHの海坊主も
家裁の許可が下りればミキの養父となることが可)
ただ、当店ではあくまで香が引き取られた当時
養母も存命だったという設定にしています。
じゃないと、AH含めシリーズ通して「母親」の存在感が
あまりにも希薄すぎるじゃないですか【泣】

その代わり、未成年の場合はやはり家裁の許可が必要。
って却下される割合はどれくらいなんでしょうか……
どういう場合が不適切か、というのが一概には言えないから
裁判所の判断に任せられるんでしょうけれど
槇村家の場合は、少なくとも特別養子の制度に則った場合は
許可が下りなさそうな家庭環境なんですよねぇ【涙】
母親はいるにはいますが病気がちで入退院を繰り返し←My設定
父親は刑事という仕事柄、なかなか家にもいられず
養育の中心的担い手になるのが、まだ小学生の長男って……orz

そして、それ以上に香のケースでは難関なのが
実親の同意を得ること。ま、当然なんですけどね
未成年が関わる法律行為には必ず法定代理人の同意が要るわけで
それはたいていの場合は親権者なわけで。
で、この親権者。CHでは「姉妹とも母親に引き取られた」とのこと。
しかし妹の香だけが実父に連れ去られた挙句、彼の犯した犯罪に
巻き込まれて天涯孤独の身の上になるわけですが
それでも書類上はあくまで母親に親権があると推測されるわけで
彼女が同意しないかぎり、香は真っ当な方法では
槇村家の養女となることはできなかったはず。
   これがAHだと少し整理されて、離婚後に香は父親に引き取られ
   その後事件に巻き込まれるわけなんですけれど、それでも
   離婚後それほど間が空いていない場合は、まずは
   実の母親に打診が来そうな気がするのですけれど……


この辺を突っ込んでみると、原作でさゆりさんが言っていた
つまり彼女が母親から聞かされた話と実際に起きたことに
少なからず矛盾があるような気がしてならないのですが。
元夫が娘をさらって行方をくらましたのち、彼女は
「必死で二人を捜し」たが「見つからず――香は死んだものと思って
諦めるしかなかった」
とのことなんですが、実父の久石の死因が
警察のお世話にならないものであれば辻褄は合うものの
人を殺して警察に追われて、その結果の事故死という
お世話になりっぱなし【爆】だとすれば、日本の警察は優秀なので
離婚したとはいえ元妻の居場所を探し当てて
事件に関係がなくてもとりあえずは
容疑者がどのような男だったか話を聞こうとするはず。
その後、担当刑事だった槇村父が香を引き取ろうと申し立てを行ったときも
家裁もその捜査結果を基に――するかしないかは別として
未だに親権者であるはずの実母の同意を確認しようとするはず。

もう、その段階で香の居場所は判っているんですよ
でも結局、そこで引き取ろうとしなかった。
まぁ、いろいろ事情はあったんだと思います。
ただでさえ母一人子一人で生きていくのも大変な上
乳飲み子を抱えて……ということに尻込みしてしまったとか、
もともと久石のことを快く思っていなかった親戚連中が
勝手に言いくるめて養子に出すことの同意をださせたとか。
さらに、その後も香の行方を追うことは難しくはなかったはず
実母の戸籍には養親の槇村家の本籍地も載っていますし
それを手掛かりに、槇兄死亡前までなら
香の現住所まで調べられないこともなかった
(現にさゆりさんは2年でそこまでは調べられた)
でもそれをせずに「死んだものと思って」というのは
結果として見捨ててしまった後ろめたさも含んでいたのかもしれません。

そんな、死の間際でさえも娘に事実とは違うことを
言い遺さなければならなかった母親の葛藤などなどは
「原作穴埋めこそ二次創作の使命!」と考える店主にとって
いずれ書きたい題材ではありますが、それはまた後ほど。
でも本を1冊読んでみて、まだまだ養子制度について
知らないこと、CHを書く上で知らなければならないことが
いろいろ多すぎる、というのが素直な感想でした。
それらを知らずして、簡単に「血の繋がらない家族上等!」とは言えないなと。
もちろん、読者はそこまで実際の制度を知らないから
という言い逃れは可能かもしれません、取調室のカツ丼のように。
けれども実社会に目を移して、虐待などで親元で暮らせない子供が
今まで以上に増えている中、里親や養子縁組が今まで以上に
身近な制度になっていく必要性もあるとは思います。
そのためにも、これから少しずつ勉強していかないと
ある意味CHもそういう流れの力になるかもしれませんからw

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定点観測up済みです。
ってすでに結構書き溜めてますw
まだまだストックはありますから
ここで告知無しで更新しているかもしれませんのでご注意を。

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