大学入試はひと段落して、そろそろ公立校の高校入試が本番かと思います。
そんな頃に思い出したようにふと浮かぶ疑問が
「香はいったいどのあたりの高校に通ってたんだろう?」
ええ、シュガーボーイのエピソードでちらと出ていたあの高校です。
槇村家の経済状態からして都立なのには違いない
それもどうやら徒歩で通えるところのようだが……と
Wikiで当時の都立高のリストを当たってみて
あーでもないこーでもないと言っているうちに、
どかんとどデカい壁にぶち当たってしまったのです。

はて、そのような槇村家の事情にとって願ったり叶ったりの高校を
果たして彼女に選べる権利があったのだろうか?


そう、その大きな壁の名は学校群制度
都立凋落の元凶として悪名高い、アレです。
東京では1967年から81年まで行われていましたので
65年3月生まれ、高校受験は79年度の香嬢は
まさにそれに該当していた世代かと。
店主は世代ではないうえに東京の受験事情も詳しく知らないので
説明に不備がありましたらごめんなさいなのですが、
要は受験の際に「学校」を志望するのではなく
いくつかの高校からなる「学校群」を志望し
合格したらその中で生徒が均等に割り振られる、という仕組みらしい。

――って、めっちゃ不条理じゃないですか?と思ったのは
店主がいわゆる学校群や総合選抜といったものとは無縁の
「行きたい高校の名前を書いて、受かったら入学
受からなかったら滑り止め」という最も単純なシステムの
公立高受験制度の県に育ったから、ですね。
以前、知人から兵庫県の「総合選抜制度」
(志望校に行けるのは成績上位のみ、残りは近いところの高校に)
を聞いて、やはりその理不尽さに驚いたのと同時に
自分とこの制度だけが「高校受験」でないことを初めて知らされました【笑】

そういえばずいぶん長いこと疑問だったのは、マンガ等の設定で
小学校から高校までずーっと一緒の幼馴染み、というやつ。
中学までは公立だったら学区で単純に振り分けられるから
家が近所だったら当然同じ小中学校になるけれど
高校が同じになるかどうかは、自県の常識だと
頭のレベルが同じかどうか次第になってしまうわけで、
そうなると「優等生と落ちこぼれ」カップルなんかの場合は
普通は同じ高校に行かないんじゃないかと。
それこそ旧制中/高女を頂点として、職業高校まで巻き込んだ
学校の序列というのが県民の頭の中にありますから【苦笑】
でもそういう設定は、先述の総合選抜のように
家からの近さで勝手に振り分けられるシステムの場合
それが「常識」なんだろうな、と今にしてみれば思います。
   ちなみに、少女マンガの名作『星の瞳のシルエット』では
   高校進学時にメインキャラたちの進学先がバラバラになってしまうのですが
   そういえばそういう設定って他にないよなぁと思いつつ
   自分の中ではそれが一番しっくりきているのも確か。
   ちなみに作者は店主の高校の大先輩ですw


で、ようやく話が70年代末の学校群制度に戻りますが
都の場合、まず学区が決まっていて
その学区内の学校群しか選べない仕組みなのですが……
何で新宿(第2学区)が渋谷、目黒、世田谷と同学区なんだ?
渋谷ならまだ判る、新宿駅の南口は
実は渋谷区(千駄ヶ谷)だったりするから。
でも新宿からだと目黒、世田谷の学校は通学範囲内でないような。
むしろ新宿駅周辺だと中野区が目と鼻の先だったりするのですが
そこは学区外で、進学先に選べないんですよ【泣】
まぁ、あんまり新宿寄りのところに高校が無かったりしますけれども。

しかも……学校「群」の間にやっぱり難易度の差があるわけで
香自身の成績は……やっぱり「可もなく不可もなく」ですかね
シュガーボーイでの高校の雰囲気的に。
でも中堅どころだと――前段で懸念したとおり――近くなくなってしまうわけで
(参照:『東京都・近県高校受験案内 昭和55年度用』(晶文社)
http://gakureki.web.fc2.com/toritsu1980.html
じゃあ近所の高校はというと、これが実は、結構な名門校
新宿高と戸山高ですよ! 先述の『受験案内』でもAと特A!!
槇兄だったら、さもありなんというところですが……
となると香ちゃん、頑張って区内の(といっても対角線上なので
区外の方がよっぽど近い)残りもう一つの高校を選んだのか、
そこもB1だからそこそこ難しいとこかもしれませんし
しかも「群」なのでその高校に通えるとは限らないわけで
運が悪ければもう少し遠い学校に通わざるを得ないことも……
そう考えると、成績次第で行きたいところに行ける私立校に
小金があればどんどん流れていったという事情もうなずけます。

でも、学校選択の基準って偏差値の輪切りだけじゃないはず
やりたい部活動ってのも大きいし、先輩や同級生などの
人間関係だって結構な決め手になるし
もちろん家に近いかどうかも【笑】
そういうのを一切無視してるような学校群制度というのは
やっぱり理不尽だよなぁと思わずにはいられないところ。

さて、制度のおかげで行きたい学校に必ずしも行けるわけじゃない
でも家庭の事情で通える学校は限られてしまってくる
私立は当然問題外、という場合
行きたい都立高に確実に行ける方法はないのかというと
実は……あります。その志望校は限られてしまいますが。
学校群制度というのは全日制普通科に限られていて
それ以外の、いわゆる職業高校等は
志望校一発勝負の逆一本釣り、つまりは単独選抜
そういえば近場に商業高校もあったような……
だとすれば、高校卒業後に進学はしないつもりっぽさそうな
香にとってはありえそうな進学先でもあるし
まさに願ったり叶ったりw ……なんですが
店主が何でその設定に二の足を踏むかというと
実はよく知らないんですよ、商業高校のことって。
周りにほとんどいないんですよねぇ、工高出は3,4人いるのに
だから、書こうにしても商高OB・OGだったら当然知ってるはずの
「あるある」を当然スルーしかねないですし【泣】

まぁもちろん、そこまで厳然たるリアリティは求めちゃいませんって
だったら制服までまるっきり同じじゃなきゃいませんし
(あれ、結構可愛いですよねw)
要は暇つぶし、店主の好きな考証ごっこなのですが、
でも香の通っていた学校が架空のものであっても
あの当時の学校群制度に基づく高校入試を
潜り抜けてきたであろうことには違いないはず、
たとえそこが「伝言板のある新宿」であったとしても。
とはいうものの、都民でもないですし
気がつきゃ学区制度そのものが廃止になってからの都立高しか
知らない店主ではありますので、その辺のところは
リアルタイムをご存知の方がいらっしゃいましたら
ご教授いただければ幸いにございますw

コメント

nophoto
そうまれいな
2015年2月26日22:59

両親とも都内出身なもので、
一応その辺りの事情はかいつまんで知ってはいるのですが。

えっと、まず槇村さんちの社宅or都営住宅について
新宿寄りだけど住所的には中野だったんじゃないかと私は考えてます。
大体場所的に現都庁の真裏から丸ノ内線中野新橋駅の間くらい。
都庁が1992年移転なので、まだ浄水場だったころですね。
神田川沿いの辺りは町工場も割と多くて昭和の雰囲気が90年代まで残ってました。
今でも割と昔の面影はあるのかも(母はあの辺りで道に絶対迷わない)。

かつ。新宿寄りの中野は公営団地群だったんですよ。
政府系(逓信とか)・鉄道系(発着なので)・都営とわりとぽんぽんあって
今では民間に払われてきれいなマンションになってしまいましたが
3~5階建ての同じような建物が結構ありました。

なので、住まいを新宿寄りの中野にすると学区問題も槇村兄の通勤の話も
「香の引っ越し」も片付く気がします。

肝心の学校ですが。
70~80年にかけて制服全廃してる学校が多いんですよ。
そこもちょっと考慮します。

学校の場所は中野坂上の堀●学園あたりが。
ランク的には33群でもあった荻高あたりかな、と。
荻高は女子高→共学の流れなので男女半分よりやや女子が多くて
香を取り巻く状況的にも説明がしやすい。制服もある。
(逆に同学区の豊多摩は男子校→共学しかも制服なしなので説明しにくい)
堀●学園あたりにある荻高みたいな都立校、というモデルで。

33群は出来のいいとは豊多摩・杉並に流れる傾向があったようなので
ちょうどいいかな~と。

母によると、第二学区の切り方は、多分、都電+私鉄+バス輸送のせいかと。
新宿区の主な住宅地は早稲田周辺と市ヶ谷~四ツ谷、水道橋~飯田橋、落合長崎周辺に
分けられて早稲田の人口密度が高いので、そういう区切りになったではとのことです。

蛟 游茗
2015年2月27日3:42

おお、詳しい情報をありがとうございますm(_ _)m
中野区の新宿寄りも団地地帯だったんですか
(むしろ新宿駅近辺が「新宿区の中野寄り」なようなw)
てっきり、都内でも随一の団地密集地帯の戸山ら辺かと思ってました。
……うーん、その設定でいろいろ書いちゃったからなぁ【苦笑】

制服も、事情をよくは知らない店主すら
「都立=私服」というイメージは持っていました。
でも「標準服」という形で採用している学校も少なくなかったらしいというのと
学校シーンが登場してるのが終業式と始業式だったので
その辺はあえてスルーしました。
(制服校でも、行事の日は略装だと怒られましたw)

なかなかこういうことは本で調べようがないので
(昔のを当たれば判るのかもしれませんが;泣)
大変参考になりました。
まぁでも、あくまで「モデル」であって
そこまで厳密でなくてもいいんですよね、
「堀●学園あたりにある荻高みたいな都立校」みたいな感じでw
せっかくいいこと教えていただきましたので
それと、My裏設定の整合性を図りつつ
これからもいろいろ考えていきたいと思います。

nophoto
そうまれいな
2015年2月27日23:28

いえいえいえいえ、上記、私の勝手な想像の産物です。

私も本誌連載中のときは、戸山団地を想像してたのですけど
いざ自分が香(受験)や槇村兄(就職)の立場になったらんん~?と
設定の難しさに頭を抱えたわけです。
で、住む場所を戸山団地から中野側にしたらなんか解決?と。

でも住居設定が戸山団地のままでもいけますよ。ニヤリ
高校時代にエリコさんと香は原宿とか渋谷とか遊んでそうなんですよね。
だから、高校は渋谷区まで通学していたと仮定します。

ちょうど、一商が旧山手通りにあるので
そこの立地で普通科高校(桜町とか理想的でいいかも…)と仮定すると、
新大久保~渋谷を電車通学すれば十分通学圏に。
渋谷まで出れば、新宿~渋谷間はバスも使えるので割とありかなと。
エリコさんは東急系の通学路を使ってそうな感じです。
あの辺はぼんやり歩いてると代官山から渋谷までへろへろ行っちゃうので
歩くの好きそうな香さんにはよいのではないかしらと思います。

商業科…て言うのも考えたのですが、なんか普通科っぽいんですよね。
商工系て進路指導に今も昔も就職活動を割とはっきりとやっている気がして。
槇村兄との描写に就職関連が出てきてもよさそうなのに、ほぼ無いので…。

個人的に私は諸事情から高校受験してないので、
やっぱり周りを蹴倒しても受験しとけばよかったかなと思うわけです。

蛟 游茗
2015年2月28日2:40

おぉぉ、対案ありがとうございます!
地図開きながらいろいろ妄想しておりますw
一商というと代官山の近くですよね。
確かに絵梨子さん登場の回とかだと
表参道の辺りは前から何度も行ったことがありそうな。
絵梨子さんは東急沿線か、または
ちゃきちゃきの渋谷区民のような、あのブルジョア感は。
(あの若さでブランドモテるなんてのは
父親がアパレル会社の社長とかじゃないと)

ただ……刑事になって忙しくなったアニキに代わって
家事のほとんどを取り仕切って、なおかつ家計の足し&小遣い稼ぎに
アルバイト、ともなるとできるだけ家から近いところ
できれば歩いて通えるくらいのところのほうが
いいんじゃないかなぁと思ったり……でも
しっかり&ちゃっかり者の香なので
「定期で渋谷に遊びに行けてラッキー♪」と思ってるのかも。

商業科は、確かに偏差値は高くはないですけど
その分「出す」方はしっかりしてそうですよねぇ。
気がついたら不景気&就職氷河期しか知らなかったもので
バブル前夜のそこそこ好景気な頃は
こんなもんだったんじゃないかなとスルーしてました【苦笑】

nophoto
そうまれいな
2015年2月28日15:53

考察好きなのでこういう話ができる人がいるととても嬉しい~(笑)

1980年代前半に高校生でバイトって今みたいな感覚ではなかったと思います。
母が70年代学費のために都心某デパートでバイトしてたのですが、
時給500円弱(割と高給)だったそうです。しかも常勤ではなくいわゆる季節労働。

80年代初頭までは学生バイトの概念が今の「常勤雇用的」なものではなかった。
学生で常時賃金をもらうのは、奨学労働か自営の延長的なもの(酒屋の配達とか)。
中元歳暮年賀引越しスタッフ的な季節労働じゃないとバイトはなかったのだと思います。
80年後半になると飲食店バイトが増えて、今の雇用形態に近くなりそうですが。
(実際、そういう話もCHの中にありますし)

だから、香がバイト的なことをしているとすれば長期休みにかかるときだけで、
普段の生活では家事労働がメインで、特定の部活動をしていなかった。
もちろん、塾予備校には行ってない。あまり早くに帰宅すると電気代かかるし
友達づきあいもあるから、街歩きや公園ダベりはする。そんな日常なのでは。

私、高校時分二人暮らしでしたが、2人分程度の家事労働なら余裕で何とかなります。
社会人と違って学生は定時帰宅ですから。あとは手際と合理性がものをいいます。

蛟 游茗
2015年3月1日2:36

いえいえ~♪ 書き手だからってのもありますが
「原作の隙間を埋める」作業が好きなんですよw
今回も有益な情報、ありがとうございますm(_ _)m
新宿だったらデパートのバイトなんて選り取り見取りでしょうしね。
小さい頃だったら暗くなるまで公園やどこかで遊ぶか
アニキのいる交番に寄り道するかできたでしょうけど
中学、高校になるともそうもいきませんから
運動部の助っ人を頼まれたとき以外は【笑】
街歩きだったり校舎追い出されるまで教室でだべったり
家庭科室を占拠して絵梨子のドレス制作手伝ったりw
してたのかもしれませんね。

……と、ここで気になったのがアニキの学生時代。
香は自分の小遣い程度を何とかできればよかったんでしょうけど
槇兄の場合、父親の遺族年金はあったものの
妹に何の負い目も感じさせない生活をさせるためには
それプラス、自力で何とかしなきゃいけなかったのかなと。
もちろん王道の朝刊配達は、父親が亡くなった直後からしていたでしょうけど
それ以外に、学校帰りにできる程度で。

家庭の事情を考えると、高校進学時に
担任から定時制を勧められてもおかしくはないんですが
(まだ当時は勤労学生も今より多かったでしょうし
経済的事情で進学を諦めるということも珍しいことではなかったはず)
「夜学っぽさ」がしないんですよねぇ、アニキにはw
むしろ、そこそこ良い学校(それこそ新宿高でも戸山でもw)で
昼間はちゃんと学業を修めつつ、でも校門を一歩出れば
小さい妹の面倒を見る優しい兄であり
一家を支える大黒柱であり、というような。
でも一方で、部活なり交友関係なり
人並みの「青春」ってものの匂いもしないんですよねぇ【苦笑】

せめて、近所の個人経営のお店とかで
働かせてもらって、生活費に充てていたんじゃないでしょうか
同級生が放課後、青春を謳歌している一方で。
……食堂のお運びさんくらいだったら
香もやっていそうな気もしますしw

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