最近、片っ端からイギリス関連の本を読んでいます。
(きっかけ、理由はまたの機会に)
もともと大学で英文学を専攻するほどのイギリス好きだったので
林望氏のエッセイなどは高校のときから読んだことはありましたが
この本の直前に読んだのが高尾慶子氏の『イギリス人はおかしい』
〈http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167123093〉
だったせいか、無条件なイギリス礼賛ではなく
むしろツッコミを入れながら読み進めていた、というか
ツッコミどころが満載だったというか何というか。
確かに新築時をピークに後は価値が落ちる一方という
日本の住宅システムは如何なものかと思う。
(自分もそのうち実家売らなきゃならないんだよなぁ
既に築24年、それプラス少なくとも十数年後になるだろうけど
更地にする費用も売主負担だとしたらなぁ……)
でも、同じようなことが震災後の今
三陸沿岸のあの風景を見た後でも言えるだろうか。
ただでさえ日本は天変地異が多すぎる
地震の無いイギリスと単純に比較ができるわけがない。
せっかく建てたところで災害で失われてしまうこともある
それも込みなのが日本の家なのだ。
もちろんこの国にだって築100年以上の古民家もある。
今まで残っている以上、当然ながら大工さんたちが
しっかりと丈夫に作ってくれたのだ、たとえ災害の多い日本であっても。
でも、そもそも基本材質が木と土と紙、家事にはめっぽう弱い。
匠の粋を集めて立派なものを造ったとしても
それが永久に残るわけではないという「諸行無常」感は
おそらく日本人の根底にあるものなのだろう。
さらに式年遷宮まで視野に入れれば
これはもう『文化』なのだというしかない【苦笑】
加えて、戦後の建物に限るのかもしれないが
古いものにはあまり信頼がおけないというのもある。
確かに赤プリとかあんな立派な建築物を
壊して建て替えてしまうのかというもったいなさはある。
でも「耐震強度が……」と言われれば素直に納得してしまうのも
日本人なんだろうなぁ。ともかく
古い建築基準の建物なんて怖くて住めたもんじゃない
新しければ新しいほど技術も進んでより安全になる。
それか、矛盾しているようだけど築100年クラスの古民家の方が
その建物そのものが何よりの証拠だから「安心」ではある【笑】
筆者が文中でチャールズ皇太子の言葉を引用しているように
イギリスの建物の魅力が“natural grown(自然に根差した)”ものであるなら
日本にとって最も魅力的なのはイギリスの真似をすることでなく
日本の古き良き建物を活かすことなのかもしれない。
実際、作者も谷根千の風情は評価しているものの
「杉並区や中野区」の住宅密集地は
消防車も入ってこられないとこき下ろしている。
おいおい、それって谷中近辺だって同じじゃないの?
ただ、それはどっちも「イギリスは古い街並みを大事にしている」だの
「ロンドンは大火後の都市計画で道幅を広げるという先見の明があった」
だのと、大好きなイギリスを持ち上げるための方便に過ぎない【爆】
それに――「古き良き」を礼賛する論調の中に
「田舎」に対する勝手な憧れに似たものを感じてしまうのだ。
都会の人間は「田舎」にノスタルジーを抱く一方で
そこにイ●ンなんかできると「地方文化の破壊だ!」などと目くじらを立てる。
「田舎」は、都会の人間のテーマパークじゃないんです
自分ばっかり便利な生活を満喫しておいて
気の向いたときにそこでの「不便」を
アトラクション的に楽しもうというのは
虫のいい話じゃありませんか?
テーマパークならそこにいるのは「キャスト」であり
「夢の国」を全力で演出しますし、それがお仕事ですが
ただの田舎だったらそれはそこに普通に生活してる地元民なんですから。
そもそも、本当に「古き良き」なんてものはあるんですかねぇ?
それが「良き」ものであったらそのままで残り続けているわけで
良くないからこそ改良して全く新しいものになったはず。
古民家だってあれは夏を旨にした造りで
冬のことなんてあんまり考えてないから
それなりにアップデートさせなければ快適に過ごせないわけですよ。
今の日本の家ですらヒートショック問題もありますし。
だとしたら、もはや古いものに戻るというのは
非現実的な選択なのではないでしょうか。
――この本の一番の欠点は「じゃあ、だったらどうすればいいのよ!」
という具体的な答えがはっきりと書かれていないところ。
まぁ、作者の趣旨としては「英国風にすれば万事解決」なのかもしれませんが
日本の風土・社会制度を無視してそれを突き進むのはKYってもの。
もちろん、このままじゃダメだよなというのは
この本を読んで作者も思いましたよ。
だとしたら進むべき道は、現状維持でもなく
伝統回帰でも、もちろんイギリス万歳でもなく
それぞれのいいところをちょっとづつつまみ食いした
ハイブリッド感あふれるもの、にならざるをえないでしょうね。
というか、それこそ日本の得意分野ですし【笑】
ある意味で、日仏ハーフの滝沢クリステルが
フランス語のスピーチの中に挟んだ「O・MO・TE・NA・SHI」
(with 合掌&お辞儀のポーズ)的なものこそ
これからの日本のあるべき姿なのかもしれませんw
(きっかけ、理由はまたの機会に)
もともと大学で英文学を専攻するほどのイギリス好きだったので
林望氏のエッセイなどは高校のときから読んだことはありましたが
この本の直前に読んだのが高尾慶子氏の『イギリス人はおかしい』
〈http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167123093〉
だったせいか、無条件なイギリス礼賛ではなく
むしろツッコミを入れながら読み進めていた、というか
ツッコミどころが満載だったというか何というか。
確かに新築時をピークに後は価値が落ちる一方という
日本の住宅システムは如何なものかと思う。
(自分もそのうち実家売らなきゃならないんだよなぁ
既に築24年、それプラス少なくとも十数年後になるだろうけど
更地にする費用も売主負担だとしたらなぁ……)
でも、同じようなことが震災後の今
三陸沿岸のあの風景を見た後でも言えるだろうか。
ただでさえ日本は天変地異が多すぎる
地震の無いイギリスと単純に比較ができるわけがない。
せっかく建てたところで災害で失われてしまうこともある
それも込みなのが日本の家なのだ。
もちろんこの国にだって築100年以上の古民家もある。
今まで残っている以上、当然ながら大工さんたちが
しっかりと丈夫に作ってくれたのだ、たとえ災害の多い日本であっても。
でも、そもそも基本材質が木と土と紙、家事にはめっぽう弱い。
匠の粋を集めて立派なものを造ったとしても
それが永久に残るわけではないという「諸行無常」感は
おそらく日本人の根底にあるものなのだろう。
さらに式年遷宮まで視野に入れれば
これはもう『文化』なのだというしかない【苦笑】
加えて、戦後の建物に限るのかもしれないが
古いものにはあまり信頼がおけないというのもある。
確かに赤プリとかあんな立派な建築物を
壊して建て替えてしまうのかというもったいなさはある。
でも「耐震強度が……」と言われれば素直に納得してしまうのも
日本人なんだろうなぁ。ともかく
古い建築基準の建物なんて怖くて住めたもんじゃない
新しければ新しいほど技術も進んでより安全になる。
それか、矛盾しているようだけど築100年クラスの古民家の方が
その建物そのものが何よりの証拠だから「安心」ではある【笑】
筆者が文中でチャールズ皇太子の言葉を引用しているように
イギリスの建物の魅力が“natural grown(自然に根差した)”ものであるなら
日本にとって最も魅力的なのはイギリスの真似をすることでなく
日本の古き良き建物を活かすことなのかもしれない。
実際、作者も谷根千の風情は評価しているものの
「杉並区や中野区」の住宅密集地は
消防車も入ってこられないとこき下ろしている。
おいおい、それって谷中近辺だって同じじゃないの?
ただ、それはどっちも「イギリスは古い街並みを大事にしている」だの
「ロンドンは大火後の都市計画で道幅を広げるという先見の明があった」
だのと、大好きなイギリスを持ち上げるための方便に過ぎない【爆】
それに――「古き良き」を礼賛する論調の中に
「田舎」に対する勝手な憧れに似たものを感じてしまうのだ。
都会の人間は「田舎」にノスタルジーを抱く一方で
そこにイ●ンなんかできると「地方文化の破壊だ!」などと目くじらを立てる。
「田舎」は、都会の人間のテーマパークじゃないんです
自分ばっかり便利な生活を満喫しておいて
気の向いたときにそこでの「不便」を
アトラクション的に楽しもうというのは
虫のいい話じゃありませんか?
テーマパークならそこにいるのは「キャスト」であり
「夢の国」を全力で演出しますし、それがお仕事ですが
ただの田舎だったらそれはそこに普通に生活してる地元民なんですから。
そもそも、本当に「古き良き」なんてものはあるんですかねぇ?
それが「良き」ものであったらそのままで残り続けているわけで
良くないからこそ改良して全く新しいものになったはず。
古民家だってあれは夏を旨にした造りで
冬のことなんてあんまり考えてないから
それなりにアップデートさせなければ快適に過ごせないわけですよ。
今の日本の家ですらヒートショック問題もありますし。
だとしたら、もはや古いものに戻るというのは
非現実的な選択なのではないでしょうか。
――この本の一番の欠点は「じゃあ、だったらどうすればいいのよ!」
という具体的な答えがはっきりと書かれていないところ。
まぁ、作者の趣旨としては「英国風にすれば万事解決」なのかもしれませんが
日本の風土・社会制度を無視してそれを突き進むのはKYってもの。
もちろん、このままじゃダメだよなというのは
この本を読んで作者も思いましたよ。
だとしたら進むべき道は、現状維持でもなく
伝統回帰でも、もちろんイギリス万歳でもなく
それぞれのいいところをちょっとづつつまみ食いした
ハイブリッド感あふれるもの、にならざるをえないでしょうね。
というか、それこそ日本の得意分野ですし【笑】
ある意味で、日仏ハーフの滝沢クリステルが
フランス語のスピーチの中に挟んだ「O・MO・TE・NA・SHI」
(with 合掌&お辞儀のポーズ)的なものこそ
これからの日本のあるべき姿なのかもしれませんw
コメント