実は店主、高村薫は初体験。
だから最初から重厚かつ微細な場面描写に圧倒されてしまいました。モノ書きの端くれとしてはどうしてもプロットよりそういうディテールに眼が行ってしまうのは、やっぱり店主がディテールで苦労しているからなのでしょうか。店主もどうでもいい細部描写で行数稼ぎするタイプですが、競馬場の雰囲気はともかく、歯科医院の描写でテクニカル・ターム並べていったい読者の何割が判るっていうんだ【爆】
ちなみに、読んだ方ならお判りだと思いますが、この小説、いわゆる『ナマモノ』です。企業トップの身代金誘拐、そして製品への毒物混入、といえば読んでいる途中ではっと気づくはず。
そしてさらに政治とカネやら株価操作やら、日経新聞読んでいなくちゃ判らないような世界に突入してしまうと、もう学問と萌えしか知らない店主の知らない世界。

そうやって不透明なカネの流れや企業内の人間関係をどんどん端折った先に見えてくるのが、合田雄一郎という刑事の感情をどこかに置き忘れてしまったかのような内面と・・・
もしかしてどこかの腐女子が加納×合田で書いただろ絶対!
何なんだ、このホモソーシャルを飛び越えたホモエロティシズム溢れる世界は?
特捜部検事の加納祐介は合田の「義兄」であり彼の妹の夫だったらしいのですが、読み進めていくうちにどうやら合田もまた加納の妹と結婚していたことが判明。
どぉよこの、レヴィ・ストロースが泣いて喜ぶ交換財としての女は【爆】もちろん「財」としての女は顔も名前も出てこない。こんな結婚は両方とも破綻して当然。
これはもう店主の書けない、いや書かない書きたくない世界。高村薫はもちろん女性ですが、物書きとしての性別は男ですね。
なので、これから先『マークスの山』やら『リヴィエラを撃て』を読もうかどうか迷ってしまいました。『李歐』なんてBLオカズ臭ぷんぷんですし【爆】

コメント

nophoto
mi
2007年8月6日14:49

>高村薫はもちろん女性ですが、物書きとしての性別は男ですね。
ここ、すごいうなずいてしまいました!

蛟 游茗
蛟 游茗
2007年8月6日17:24

そうですよね!何で女があそこまで女っ気の無い話が書けるのか想像できません。
ここに出てくる女性登場人物の薄っぺらいこと。
女性作家の書く女性が主人公のミステリーのひりひりした被害者意識も好きになれませんが(せめてフィクションでくらい颯爽としたスーパー姐さんの活躍が見たいんだよっ)
ここまで「女」であることを抹消した女性作家の小説も嫌だな、ジェンダー系としましては。

nophoto
やつで
2009年4月5日20:54

加納祐介は合田の「義兄」であり彼の妹の夫

大間違いです。加納は結婚してませんし、合田に妹はいません。

蛟 游茗
2009年4月9日0:08

あら、そうでしたか。すみませんでした。
図書館で借りてきた本だったのですぐに確認できませんし
改めて読み直そうとも今のところは思っていないので・・・
でも、この二人の親友や元・義理の兄弟という言葉だけでは済まされない
関係の濃さ、という印象は今でも全く変わらないですね。

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