お休みなので録りためた『踊る』スピンオフ2作・計5時間を一気見という暴挙に出てみました。
TV版を初回からリアルタイムで見て、劇場版2作品はどっちも映画館で見た『踊る』ファンとしてはスピンオフに対してはちょっと複雑な気分でした。
店主が見たいのは青島君でありすみれさんであり、王道から懸け離れていっているんじゃないかと。
しかし、見てみてそれは杞憂だったと考えを改めました。懸け離れていっているというよりむしろこれは、『踊る』ワールドを広げていってるんじゃないかと。
続編を望む声がファンの間で高いにもかかわらず、主演クラスがゴネてたり出演者の中に既に鬼籍に入られた方がいるとかいう場合、
出られる脇役でスピンオフ、というやり方もありうるんじゃないでしょうか?
このやり方がもっと広がっていってもいいはず。

ということで第一弾、『交渉人・真下正義』から。
まさしくさっき言った杞憂を吹き飛ばしてくれたのがコレであり彼なんです。舞台は湾岸署から警視庁交渉課準備室、そしてTTR運行司令室と移ってもドラマツルギーにはブレがありません。
つまり、劇場版前2作と同じく異なる立場の人間がいかにして一つの目的に立ち向かっていくか。
『踊る』でキャリアvs現場だった構図が警察の意地vs鉄道マンのプライドとなっただけ。この既視観がスピンオフという形式に幾許かの不安を与えていた観客に安心感を与えたのではないでしょうか。
しかしそこに新風を吹き込んだのは寺島進演じる木島刑事。
刑事ドラマ名物の“無茶”担当として、文字通り大いに大暴れしてくれました。
泉谷しげるの「バカヤロー」キャラを継承できるのは彼しかいない!
彼を主人公にしたスピンオフ(のスピンオフ)を録り損ねたのを思わず後悔。
そして、浮かび上がった容疑者が実は既に死んでいた、という展開にパトファンなら思わず身を乗り出してしまうはず。そして思わせぶりに偽カエル急便の配送車にまとわりつくカラスの群れはまぎれもなくパトスキーへの大サービス。
確かにP1も遊馬を主人公としたパトのスピンオフともいえるかも。
そしてさらにもう一つ、隠されたパトとのリンクが。
映画のカギを握る表沙汰にされない幻の地下路線。店主も真下同様、この手の本を読んだことがあります。もちろん思い出したのはP2の『幻の新橋駅』。
本にも映画にもそれについての具体的記述はありませんでしたが、
本広監督か脚本の君塚氏はこの本を読んでP2を思い出したかもしれない。
いや、もしかしたらこの本を見た瞬間P2を思い出して、それで手にとったのかもしれない。

まだまだパトに出会ったときはヲタクとはいえない店主でしたが、
こういうヲタク的な見方を教えてくれたのは紛れもなく『踊る』でした。
いわば店主にとってはヲタクの教習所といえるドラマだったわけです。

続いて『容疑者・室井慎次』。
これはむしろシリーズ物としては必ず一つはある『異色作』といえる作品かもしれない。監督を手がけたのは今まで脚本から『踊る』ワールドを支えていた君塚良一。
やはり監督が変わると映画というものはここまで変わるものだろうか。
まず色調からして違う。本広版『踊る』ワールドはいわば蛍光灯のようなぱきっとした色調だが君塚版は全体がセピア色。
そして本広版が、そのまま一般企業のオフィスに転用可能な湾岸署内やそれらしくステッカーの貼られたノートPCなどの「ありえる」世界だとしたら
君塚版のそれは「いかにも」な世界――フォトジェニックな古い警察署や寂れた法律事務所、北新宿署の刑事たちも湾岸署の公務員然としたある意味リアルな警察官ではなく、ドラマの中にしかいなさそうな連中ばかり。
自分の専門領域に引き付けてしまうのだが、リアリズムと象徴主義くらい異なる世界観の上に成り立っている。
もっとも、総ての元となったTV版『踊る』では、連続ドラマの常として毎回演出は異なっていた。が、そこから『交渉人・真下正義』に至るまで
ポップな音楽とそれにノッたカメラワークのテンポと俳優のリズム、そしてときどきそれを乱すかのようなギャグというまさしく『Rhythm&Police』というコンセプトが貫かれていたはずだ。
しかし『容疑者〜』で『踊る』らしさを感じた瞬間といえばスリーアミーゴスが出てきたシーンのみ。それ以外は今までの『踊る』とは異なるテンポだったのではないかと思うのだが。
そういえば警察キャリアの権力抗争という構図はある意味『踊る』的ながら今まで描かれていなかったような。「官僚機構としての警察」という概念を刑事ドラマに持ち込んだのは間違いなく『踊る』であり、それは『踊る』以後の刑事ドラマに脈々と受け継がれて見事『相棒』で結実した、と思う。
思えば大杉漣演じる公安が最初出てきたのはOD1だったが、その頃はまだある種笑われ役だった。それがいつの間にか悪役の一端をなしているのだから、時代は(そして刑事ドラマは)変わったものだ。

そして、『交渉人〜』『容疑者〜』ともなのだが
湾岸署、お台場という枠を離れた『踊る』が向かったのが新宿というのが
CHファンとしては非常に興味深いのだが。
やっぱり刑事(と読んでデカと読む)スキーの心をひきつけるものがあるのだろうか、新宿の街には。店主も新宿描きたくて二次創作に手を出したようなもんだから。

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